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  • 倉科智子

アースシップが建っている場所は標高600mの山の中。

だから夜は暗い。

「暗い」の中でもかなりの暗さだと思う。


この家を建てる数年前、徳島県に来たばかりの頃

山の集落の寄り合いに初めて参加した時のことを今でもよく覚えている。

集まりが終わり外に停めた車で地域の人たちが三々五々に帰っていく中、

私は出遅れて気がついたら最後になってしまった。

そうしてふっと辺りを見回すと、本当に真っ暗で、、

というよりも真っ黒という表現の方が、

私が覚えているその時の印象にはぴったりかもしれない。

目を開けていても、閉じても同じような感じで、

方向感覚さえ怪しくなる。

私が今まで夜だと思っていた夜とは全然違っていた。


数年前、徳島での暮らしにも慣れてきた頃、

用事があって東京に1泊することがあった。

用を済ませ丸の内のビルを出て、宿泊先のホテルまで歩いていた時、

今度は逆に昼間のような明るさに驚いた。

多分夜の9時過ぎ頃だったと思うけれど、

私には夕方のようにしか感じられなかった。

衝撃だった。

2015年の夏に徳島へ来るまで、ずっと神奈川県で暮らし、

東京へも仕事で通勤していたし、慣れ親しんだ土地柄だったのに

その頃は夜が明るいなんて感じたこともなかったように思う。

住んでいた街だって比較的山や海が近くに感じられて、近くには

古い寺もあるような静かな場所だったから、夜の暗さはこのくらいと思っていた。

でも私が徳島で体験した夜は、それらと全く質が違っていた。


だから自分の感じ方の変化にも驚いた。

多分私の体内リズムや感覚は、いつの間にか徳島基準に変更されていたのだと思う。


今や私にとって「夜」とは、徳島の山の中の漆黒の夜がスタンダードになってしまった。


夜にまつわることをもう少し書こうと思う。

この家に暮らし始めてから変化した就寝時間のこと。

アースシップは家の中の温度を年間通し快適に保ため色々な工夫がされていて、

南側の大部分を占める大きなガラス窓もそのためだ。

このガラス面が広いので、空がいつでも見渡せる。

当たり前だが、夏至に近づけば近づくほど陽が沈む時間が遅くなり、

冬至に近づくほど早くなる。

そして就寝時間、というか眠くなる時間もこの変化に呼応していることに最近気がついた。

冬至に近いほど夜眠くなるのが早くなって、反対に夏至に近づくほど

夜寝るのがゆっくりになった。

根拠はないが、夜がしっかり暗くなるから、

なんとなくもう眠らなければと体が察知するのかもしれない。

この家の周りに自生している植物の中にも陽が沈むと葉を閉じたり、

咲いていた花が蕾になったりするものがある。

例えば家の裏に生えているネムの木の葉がそうだ。

もしかしたら私たちの体も本来は植物たちのような機能が備わっているのかもしれない。

就寝時間の話だった。

私の去年の冬至付近の就寝時間は最早19時でした。

これを人に言うと皆さん一様に爆笑、もしくは若干引いている。

昨日が秋分の日だから、今は夏至と冬至のちょうど真ん中なので、

寝る時間も比較的ゆっくりだと思う。

もともと割と早めに寝る方だったけれど、この家に来てからさらに加速した。


真っ黒な夜の暗さだから体験できることで、もう一つ書いておきたいことがある。

それは星のことだ。

新月に近い夜で、雲がない日の星の見え方はちょっと凄すぎる。

この間も星が綺麗な日に泊まられたお客様と一緒に外に出てしばらく夜空を眺めていた。

天然のプラネタリウムだった。

また先日お泊まりの方達と、ガラス張りの部屋にあるダイニングテーブルを囲んで

話をしていた時は、夜空に長い尾を引く流れ星を見た。

少しの間シンとした感じと、なんとなく嬉しい気持ちになった。

その話を翌日近くの人に話したら「そんなもんいつも見えるわ」とさらっと言われた。

この地域の人たちはこんな空を毎日ずっと見続けているのかと、感慨深い気持ちになった。


さあ、今日もそろそろ就寝時間。



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